結論

紹介による集客を増やしたいなら、すでに推奨したいと思っている顧客を「見つける」ことから始めます。報酬で人を動かすより先に、報酬がなくても薦めたい人が誰かを特定するほうが早く、続きます。

ただし2023年10月以降、「見つけたあと、こちらからお願いするかどうか」で守るべきルールが変わります。依頼した時点で、その投稿は景品表示法上「事業者の表示」として扱われ得るためです。この記事では、推奨者の見つけ方と、依頼するときの線引きの両方を扱います。

紹介集客の3ステップ。1.利用者に聞く 2.推奨度9〜10の推奨者を見つける 3.紹介を相談する。報酬より先に特定する、全員に頼まない、依頼したら広告表示を確認する、の3点が要点。
紹介集客は「お願いする」より先に「すでに薦めたい人を見つける」から始めます

紹介してくれる人は3種類ある

紹介者をひとまとめにすると設計を間違えます。動く理由が違うためです。

紹介者の3タイプ。アンバサダーは報酬なしで熱量と信頼が高く継続紹介向き。インフルエンサーは報酬と相性で動き認知拡大向き。アフィリエイターは成果報酬で獲得向き。中小企業はまず既存顧客のアンバサダーを狙う。
中小企業がまず狙うのは、報酬で動かない既存顧客のアンバサダーです
種類動く理由向いている使い方
アンバサダー商品が良いから、人に喜んでほしいから報酬なしの継続的な紹介。数は少ないが熱量と信頼が高い
インフルエンサー報酬+自分の好みや世界観に合うか短期の認知拡大。案件は本人が選ぶ
アフィリエイター報酬(成果に対する対価)成果報酬での獲得。継続性は条件次第

影響力の大きいアフィリエイターをインフルエンサーと呼ぶこともあり、この2つの境界は曖昧です。一方でアンバサダーは「報酬で動かない」という点で明確に違います。この記事はアンバサダーを扱います。

推奨者を見つける質問

アンバサダーは「見つけてもらった」「選ばれた」と感じることを重視します。つまり最初にやるのは、募集することではなく、特定することです

特定の方法として広く使われているのが、購入者・利用者に次の1問を聞く方法です。

この商品(サービス)を、友人や同僚にどのくらい薦めたいと思いますか?

回答は 0〜10の11段階で取ります。0が「まったく薦めない」、10が「非常に薦めたい」です。この指標はネット・プロモーター・スコア(NPS)と呼ばれ、Bain & Company の Frederick F. Reichheld 氏が2003年の Harvard Business Review で発表した「The One Number You Need to Grow」が初出です。0〜10で聞き、9〜10を推奨者とする区分は提唱元の定義に基づきます。

回答者は点数によって3つに分けます。

NPSの0〜10の11段階。0〜6は批判者で先に不満を解消する、7〜8は中立で改善のヒントを聞く、9〜10は推奨者でここだけに紹介を相談する。1〜10ではなく0〜10で聞き、8は推奨者に含めない。
0〜10の11段階で聞き、9〜10と答えた人だけに紹介を相談します
点数分類扱い
9〜10推奨者(Promoter)ここだけに紹介を相談する
7〜8中立者(Passive)満足はしているが薦めるほどではない。改善のヒントを聞く
0〜6批判者(Detractor)不満の中身を聞き、先に解消する

重要なのは、9〜10と答えた人にだけ絞ることです。全員に紹介をお願いすると、乗り気でない人に負担をかけ、断られた側にも良い記憶が残りません。

2023年10月から変わったこと

ここからが、この手法を今の時代に使うときの要点です。

2023年10月1日から、広告であるにもかかわらず一般消費者が広告だと判別できない表示は景品表示法違反となりました。消費者庁は次の3点を明記しています(消費者庁)。

  1. 広告には、企業がインフルエンサー等の第三者に依頼・指示するものも含まれる
  2. 個人の感想等の広告でないものは対象外
  3. 規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)だけ。依頼を受けた第三者は対象にならない

3点目が実務上とても重要です。アンバサダー本人は責任を問われません。責任はお願いした側にあります。だから、相手を守る設計をするのは事業者の仕事になります。

依頼と便益で4つに分かれる

自社の状況がどこに当たるかを確認してください。

依頼の有無と便益の有無による4分類。依頼ありなら便益の有無にかかわらず広告表示が必要。依頼なし便益ありは表示するのが安全。依頼なし便益なしは個人の感想で対象外。分岐点は報酬より依頼の有無で、責任は事業者側にある。
分岐点は「報酬を払ったか」ではなく「事業者が依頼したか」です(2023年10月〜)
依頼便益(金銭・商品・割引・特典)扱い
していない渡していない個人の感想。規制の対象外
していない渡している便益が投稿の動機と見られる可能性がある。表示を求めるのが安全
している渡していない事業者の依頼による表示に当たり得る。広告である旨の表示が必要
している渡している事業者の表示。広告である旨の表示が必要

元の手法である「報酬で動かない人を見つけて、その人に紹介を相談する」は、依頼あり・便益なしに当たります。つまり、こちらから声をかけた時点で、投稿に広告であることの明示を求めるのが安全な運用です。

依頼するときの実務

推奨者が見つかったら、次の順で進めます。

紹介を依頼する5ステップ。1.感謝を伝える 2.良かった点を聞く 3.紹介を相談する 4.PRなど広告表示を伝える 5.内容は本人に任せる。断りやすくし、文面を決めすぎない。
強制せず、広告であることの表示だけは明確に伝えます
  1. まず感謝を伝える。紹介の相談より先に、9〜10と答えてくれたことへのお礼を伝える
  2. どこが良かったのかを聞く。相手の言葉を知ることが、そのまま紹介文の材料になる
  3. 紹介を相談する。強制せず、断りやすい形で聞く
  4. 広告表示のしかたを伝える。「PR」「提供」など、投稿を見た人がすぐ分かる位置に書いてもらう
  5. 内容は相手に任せる。文面を指定すると、体験に基づかない表示になり、別の問題が生じる

「特別感」の作り方

アンバサダーが応じてくれるかどうかは、金額ではなく扱われ方で決まります。便益にならず、かつ相手が「選ばれた」と感じられるものには次があります。

特別感の作り方。OK例は感謝を伝える、意見を聞く、反映した結果を伝える、相談しやすい窓口。注意点は限定品や割引は便益になり得ること、渡すなら表示を求めること、Google口コミは別設計にすること。
SNSでの紹介とGoogle口コミは、ルールが違うので分けて設計します
  • 名前を挙げて感謝を伝える(本人の許可を取ったうえで)
  • 商品開発や改善に意見を聞き、反映したら結果を報告する
  • 困ったときに直接連絡できる窓口を用意する
  • 紹介してくれた相手のことも大切に扱う

一方で、限定品の提供・割引・先行販売の権利などは便益に当たり得ます。渡すこと自体は問題ありませんが、渡すなら投稿に広告表示を求める、という運用に統一するほうが判断に迷いません。

始める前の確認項目

アンバサダー施策の確認
  • 推奨度の質問を0〜10の11段階で用意している
  • 紹介を相談するのは9〜10と答えた人だけに絞っている
  • こちらから依頼する場合は、広告である旨の表示を求めている
  • 投稿の文面や評価をこちらで指定していない
  • 便益(商品・割引・特典)を渡す場合の扱いを決めている
  • Google口コミへの依頼とは、設計を分けている

次にやること

推奨者を見つける仕組みは、アンケートを1回送るだけなら今日から始められます。効いてくるのはここからで、聞き続けるほど推奨者のリストが厚くなり、紹介の母数がそのまま増えていきます。

まずはアンケート1問を送って、9〜10と答えた人が何人いるかを数えてください。そこが紹介の母数です。

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