結論

自社キャラクターは、作って出すより「一緒に作る過程を見せる」ほうが効きます。

理由は2つです。

  • 完成品には接点がない。 出来上がったキャラクターを公開しても、見る人は受け取るだけです
  • 選ぶ過程には接点がある。 応募する人、応募作を見る人、選考を見守る人。完成する前から関係者が増えます

当社は口コミロボの公式キャラクターを一般公募で決めました。応募は40件を超え、閲覧数は1.4倍になり、公募をきっかけに12件の導入がありました。 この記事は、そのときに実際にやったことと、先に決めておかないと後で困る権利の処理をまとめたものです。

芸能人よりキャラクターが扱いやすい、は今も正しい

企業が「商品の代弁者(スポークスマン)」を立てる考え方は昔からあります。大手はタレントを起用しますが、中小企業には次の問題があります。

タレントキャラクター
費用継続的に発生制作時のみ(+管理)
契約期間期限がある。更新のたびに交渉期限がない
私生活の影響本人の言動がそのままブランドに乗る影響を受けない
経年年齢とともに印象が変わる何年経っても同じ
使える範囲契約で決めた媒体・期間のみ権利を持っていれば自由

タレント起用が難しいのは費用だけではありません。人は変わりますが、キャラクターは変わりません。

中小企業にとっての本当の利点は、費用より「変わらないこと」です。 一度決めた印象が、5年後も同じまま使えます。

実際にやったこと: 口コミロボの公式キャラクター公募

当社の口コミロボ(Googleマップ集客のAIツール)で、公式キャラクターを一般公募しました。

  1. 2025年11月6日、第一弾の公募を開始。 プレスリリースで「公式キャラクターを一般公募する」と発表しました
  2. 40件を超える応募が集まりました。 プロ・アマ問わず全国から届きました
  3. 2026年3月16日、結果を発表。 最優秀作品を公式キャラクター「ロボペン」として正式採用しました
  4. 2026年3月23日、第二弾の公募を開始。 世界観を広げる2体目を募集しています

採用された「ロボペン」は、頭のアンテナと丸いフォルムのペンギン型ロボットです。役割は2つに絞りました。

  • 講師役 — Googleマップ対策の仕組みを、イラストや漫画形式で解説する
  • お願い役 — 店頭のPOPやQRコードに登場し、店主の代わりに「口コミお願いします」と伝える

公募そのものが集客になる

ここが、この記事で一番伝えたい部分です。

公募は「デザインを安く手に入れる方法」ではありません。 実際に起きたのは、次のことです。

起きたこと実績なぜ起きたか
応募が集まった40件超キャラクターを描くには、何のサービスか理解する必要がある
閲覧数が伸びた1.4倍「どれが選ばれるか」は、完成品より読まれる
口コミロボの導入につながった公募経由で12件サービスを理解した状態で接点が生まれている

いずれも当社が自社で計測した数字です。完成品を発表するだけでは、この接点は生まれません。

40件の応募に対して12件の導入です。 デザイン費として見れば高い買い物ではありませんが、そもそもデザインを買う施策ではなかった、というのがここでの結論です。

結果発表では、採用作だけでなく応募作も制作者のコンセプトつきで公開しました。 「検索上位にしがみつく」をコアラで表現した作品、地図のピンをツインテールに見立てた作品、口コミ好きの人間型ロボット。どれも、サービスを理解していないと出てこない発想です。

選ばれなかった作品を紹介することが、そのまま「このサービスは何をするものか」の説明になりました。

作る前に決める3つ

絵を発注する前に、次の3つを決めます。順番も大事です。

1. 役割を決める(絵より先)

そのキャラクターが何を言う役なのかを先に決めます。当社の場合は「教える役」と「お願いする役」でした。

役が決まると、置き場所が自動的に決まります。教える役なら操作マニュアルと解説記事、お願いする役なら店頭POPとQRコード。逆に、役が決まっていないと「とりあえずチラシの隅」になります。

2. 社内の感覚だけで選ばない

デザインを社長や担当者の好みで決めると、社内にしか通じないものができあがります。

当社は公募という形にしたことで、選考の段階で外の目が入りました。選ぶ材料が複数あることが重要です。 1案だけを社内で見て「いいね」と言っても、比較対象がないので判断になりません。

3. 設定を文字で書く

見た目だけ決めて終わりにしないでください。そのキャラが何を言い、何を言わないかを文字にします。

キャラクター設定として書いておくこと
  • 何の役か(教える/お願いする/注意する など)
  • 誰に向かって話すか(店主か、その先のお客様か)
  • 口調(丁寧語か、くだけた言い方か)
  • 言わないこと(断定を避ける表現、扱わない話題)
  • 使ってよい場面と、使わない場面

口調が決まっていないと、担当者が変わった瞬間にキャラクターが別人になります。 文字にしておけば、誰が作っても同じ人物として振る舞います。

権利の処理を先にやる

ここは元の考え方には無かった部分で、公募でやるなら避けて通れません。

著作権は「全部譲渡」と書いても全部ではない

文化庁は、著作権を全部譲渡する場合の注意点をこう説明しています。

二次的著作物に関する権利を含め著作権の全部を譲渡する場合には、(略)「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」とその旨を明記する必要があります。(略)明記しない場合、二次的著作物に関する権利は譲渡の対象ではないと推定されます(著作権法第61条第2項)

文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」

キャラクターは必ず改変します。 表情を変える、ポーズを増やす、着せ替える、グッズにする。これは第27条・第28条の範囲です。ここを明記していないと、採用したのに描き足せない絵が手元に残ります。

著作者人格権は譲渡できない

文化庁の著作権テキストは、「著作者人格権」は一身専属の権利とされている(第59条) と説明しています。つまり契約で譲り受けることができません。

改変して使う前提なら、譲渡とは別に**「著作者人格権を行使しない」という合意**を募集要項に入れておく必要があります。

名前も押さえる

キャラクターの名前を継続して使うなら、商標の登録を検討してください。絵の著作権と名前の商標は別の話です。名前の候補の出し方と、商標・ドメインの確認順は商品名の決め方にまとめています。

キャラクターに言わせても、広告は広告

「キャラクターが言っているから広告ではない」は通りません。

2023年10月1日から、事業者の広告であるのに広告と分からない表示は、景品表示法違反(ステルスマーケティング規制)の対象です(消費者庁)。

判断されるのは誰の表示かであって、話者がキャラクターかどうかではありません。自社キャラクターが自社サービスを薦める投稿は、事業者の表示です。

場面扱い
自社サイト・自社の公式アカウントでキャラクターが薦める事業者の表示だと分かるので問題なし
キャラクターの「中の人」名義で、第三者を装って薦めるステマ規制の対象
応募者や協力者に依頼して、依頼を伏せて投稿してもらうステマ規制の対象
応募者が自発的に「応募しました」と投稿する依頼していないなら対象外

自社の公式アカウントや自社サイトでキャラクターが話す分には、事業者の表示であることが明らかなので問題になりません。

公募をやる前の確認項目

募集を公開する前に
  • キャラクターの役割を文字で決めた(何を言う役か)
  • 募集要項に、著作権の譲渡範囲を書いた(第27条・第28条を含む旨)
  • 募集要項に、著作者人格権の不行使を書いた
  • 応募作品を広報目的で公開する可能性を書いた
  • 賞金・賞品と、その支払い時期を書いた
  • 選考の基準と発表の時期を書いた
  • 名前を商標で押さえるかを検討した
  • 発表後にキャラクターを使う場所を、先に決めてある

次にやること

今日できるのは1つです。自社のサービスについて、お客様に一番言いにくいことを1つ書き出してください。 「口コミをお願いします」「紹介してください」「値上げします」。

その言いにくいことを代わりに言う役が、そのままキャラクターの役割になります。 当社の場合はそれが口コミの依頼でした。役が決まれば、絵は後から公募でも外注でも作れます。

そして公募でやるなら、先に決めるのは権利の文面です。 応募が集まってからでは条件を変えられません。

当社の口コミロボは、店主が言いにくい「口コミのお願い」を、キャラクターと仕組みの両方で肩代わりするために作っています。